タロウのリサイタル!!マイク離さないタロウ
私の求めている本を探すことを口実に、家族3人で電車に乗り、隣駅へ向かった。
ダンナが提案した気晴らしのお出掛けが、私にとって衝撃的な出来事になった。
書店をはしごして用事を済ませ、恒例の私のウインドーショッピングが始まった。
ダンナとタロウは退屈そうに街を見下ろせる窓から景色を見ていた。
すると、突然タロウは何かを思い出したかのように 「タイムボカン行く!」 と訴えた。
タイムボカンとは約30年前のテレビアニメだ。
タロウは携帯の動画でタイムボカンのオープニングテーマを聴いてから、口ずさむほど大のお気に入りになっていた。
でもなぜいきなり!?
自閉症のタロウは、思いは強いのに、それをうまく伝えることが苦手だ。
タロウの言おうとしていることを突き止めるため、タロウの言うことをを道しるべに歩いた。
…もしや、これはカラオケボックスへの道!?
ダンナが「前にパパとママが歌ったところ?」などとカラオケかどうかを確認したら、 全てイエス!!
今回のコラムの最後に、ちょうど4週間前にカラオケに行った日の日記をつけておくので、是非比較していただきたい。
まさか、タロウ自らカラオケに行きたがるなんて思いもよらなかった。
が、タロウのサプライズはまた終わったわけではなかった。
「(タロウが)ダメだったら途中で出ちゃえばいいよね」
とダンナと話し、1時間半で申し込んだ。 カラオケボックスの個室に入った。
タロウはあまり緊張していない様子だった。
タロウはアイスを食べながら、聴く専門になっていた。
“タイムボカン”も聴くだけだった。 いつの間にかタロウが口ずさみ始めた。
マイクを向けたら…
マイクに向かって歌ってる!!
私がマイクを持つ手が疲れた頃、トイレ休憩をさせてもらった。
部屋に戻ると… タロウがマイクを握り締めて歌っている!!
終了10分前の電話が鳴り、私は
「30分延長します!!」
タロウのリサイタルの始まりだ♪
タイムボカンを5、6回歌った。
タロウがマイクを離さない!!
他に、 スキマスイッチのボクノート スピッツの魔法のコトバ 南野陽子の楽園のDoor を歌った。
どの曲も、日本語なまりの宇宙語だった。
音感がなく、小さい頃から声帯をきたえていない私は、歌が苦手だ。
タロウの方が現時点でうまいかも。
いや、うまい。
私は下手なりに、ジャニーズ系を歌えたし、何より、タロウがたくさん歌ってくれて満足だ♪(⌒~⌒)
タロウは不安を克服して、好きなことを一つ増やした。
タロウの成長に驚かされ、次の日である今日も私はちょっと放心状態だ。
ここに添付するのは、10月23日(4週間前)の日記『カラオケ体験』の一部です。
部屋に入ると、タロウが固まった
不安で動けない様子だ😣
それを見た私も不安でいっぱいになってしまった😣
タロウの要望で、室内の音楽を最小限にし、歌わずに注文した飲み物で乾杯した私はこっそり頓服を飲んだ💧
タロウの好きそうな曲を選び、演奏がかすかにしか聞こえない中、アカペラで歌うダンナと私💧
私、音痴なんだけどなタロウは飲食するだけで、ダンナの声量に耳塞ぎしたりしていた💧
でも、ちょっとは楽しんでたみたいだ😉
元々、歌をうたうのが大好きな子だから、カラオケも好きなんだろうな、と😁
かんしゃくから天使へ
自宅へ一時帰宅した。
一時帰宅なのは私の事情だ。 タロウは何となく、その辺の事情を理解しているようだ。
2才の頃は暗黙の了解まで全て話し、タロウのお気に入りを全て持って移動していた。
かんしゃく対策に慎重になっていた。
でも今のタロウは臨機応変で、荷物は少ない。
実家最寄り駅のホームに着くと、いきなりタロウが母の帽子を取り、胸で握り締めた。
電車が飛ばしてしまうことを心配したらしい。
母が売店に行った時はすごく心配し、それからは、タロウが一人でダンナ、私、母の手を握った。
不安の強い子だけど、本物の天使に見えた。
バッグとボタン
自宅に約1週間帰宅(不安障害の私のリハビリがてらの帰宅)したが、実家にいる時は毎日毎日プラレールの貨物を長く長く繋いで遊んでいたのに、自宅での1週間でガンダムのフィギュアにばかり興味を持つようになった。
ダンナの洗脳だ。
私は貨物の方が好きなので、かなり寂しい。 って、これ、天使な話じゃないね。
でも、これも成長ってことで。
自宅から実家に帰る時、タロウは生まれて初めて斜めがけバッグを身につけてくれた。
今までリュックもバッグも一切拒絶していたから、私にとってはとても嬉しい出来事だった。
バッグの中には、ガンダムのフィギュアを入れ、大切そうに持っていた。
話はそれるが、今日、タロウは生まれて初めてボタンをかけることができた。
自閉症って、やる気のないことは、やる能力があってもやらない。
やる気を起こさせることと、できた時はちょっと大袈裟な位に褒めることは、私以外の家族も自然にできている。
タロウは拍手喝采を浴びた。
タロウ3才8ヶ月。少しずつだけど、ちゃんと歩んでいる。
親離れ第一歩
タロウと一緒に郵便局へ行った。
タロウにとっては試練と忍耐の場になった。
振り込みや入金など、いろいろな用事があったため、私はタロウそっちのけで忙しくあっちこっち歩いた。
タロウは不安が強く、絶対に私から離れることなく着いてくるからと安心していた。
ATMの前に立ち、ふと後ろを見ると、タロウがいない。
郵便局内の元居た場所に戻ると、タロウは生まれて初めて『迷子』になっていた。
不安そうにキョロキョロしていた。
ほんの1分もないできごとだった。
タロウを見つけると、半べそで怒っていたが、一緒にATM操作などしていたら落ち着いた。
椅子に座り、番号札を持ち、呼ばれるのを待っていた。
タロウは椅子に寝そべっていた。
番号を呼ばれたので、タロウに「ママはあそこで支払いしてくるから、ここで待っていてね」と、タロウから離れた。
端っこの窓口だったため、タロウの位置からは見えなかった。
私は支払いながらも、何度も後ろを向いてジャンプし、タロウの様子を見ていた。
タロウは落ち着いた様子で待っていてくれた。椅子に寝そべったままで。
頭をグシャグシャになで、「よく待っていてくれたね。 助かったよ」とほめた。
本当にうれしかった。 親離れ、第一歩だね。